老子第29章 天下は神器なり
この世のすべては宇宙、太陽、地球、月、動植物、鉱物、気候など森羅万象ことごとく道(宇宙法則)の顕れです。
天下、国家もまた道の顕れであり、その器の大きさからいって神の領域といえます。
たとえどんなに優れている国王、大統領、首相であろうとも、ひとりの人間の考え方、感情、行動力で治めきれるものではありません。
私は天下を自分の思い通りにしようとした人たちが、心身ともに休む暇がなく、不安と焦燥にさいなまれているのを知っている。天下は神聖な器であり、ひとりの人間がどうにもしようがないものだ。なんとかしようとするものはそれに損害を与え、それに固執するものはそれを失ってしまう。
“万物は陰陽からなり”
先を急ぐものもがあれば後からゆっくりついていくものもある。
緩やかな息遣いをするものもあれば、激しく息づく者もいる。
あるものは強壮であるが、あるものはひ弱い。
権力者がいれば徳のある人もいる。
富貴の人もいれば貧乏人もいる。
スポーツの上手な人もいれば下手な人もいる。
すべての人たちに公平な政治などはあり得ないのが現実である。従って、心ある為政者は過度の行いを避けて中庸を守り、浪費を避けて慎ましく暮らし、傲慢になることを避け謙虚に生きる。